「どん底からの成功法則」という本、著者の堀之内九一郎さん

仕事の必要があり、堀之内九一郎さんの「どん底からの成功法則」を読んでみた。
「成功法則」についての類書は昔からあまた出版されているが、この本はいわゆる成功ノウハウ本とは趣を異にしている。
堀之内さんは、以前「マネーの虎」というTV番組に資金提供側の社長として出演していたのでご存知の人も多いと思う。
風貌は厳しそうだが、なんとなく「人に暖かそうな人物」という印象を抱いていた。
恥ずかしながらこの堀之内さんが、日本全国に200近くの店舗を持つリサイクルチェーンの経営者とは知らなかった。
また、父から継いだ家業をつぶしてしまい、有り金を持って東京に向かう途中の浜松で路銀が切れ、そのまま浜松に住み着きホームレス生活をやっていたことも初めて知った。
つまりこの本は、ホームレスのどん底から年商100億円を超えるリサイクルチェーンを築き上げた堀之内さんの、サバイバルとサクセスの体験談なのである。
文章は読みやすく、アポイントメントの待ち時間で一気に第二章まで読めてしまう。
第一章は、どん底の冷たさを自分の体で確かめ、なぜそうなったのかを本気で考えて見なさいという趣旨。
いわゆる自分の今を、きちんと確認しなさいということ。
第二章は、そこから本当に抜け出したいなら、あれこれ理屈を言ってないでとにかくがむしゃらに行動せよ、という趣旨。
面白かったのは、大きなプールの水を小さなさかずきを使って全部汲み上げるという一見無意味な行為も、とにかくがむしゃらにやってみて初めて次の効果的な方法が見えてくる、という指摘だ。
さかずきで汲み出すなんて、非効率なことはやってられないと理屈をこねて頭の中であれこれ悩むのではなく、今それしか方法が見えないならまずその方法でやってみようと、さかずきを手にとって懸命の行動を開始するタイプの方が、どん底から抜け出せる可能性が高いという指摘だ。
必死にさかずきを使う中で初めて、コップが見え、バケツが発見され、ポンプが使えるようになるというわけだ。
「千里の道も一歩から」や「観る前に跳べ」などの教訓めいた言い方より、プールの水とさかずきという堀之内さんのたとえ話の方が、どん底の経験者でそこからの復活を遂げた実践者の言葉だけにストレートに共感できる。