月別アーカイブ: 2015年2月

「巨星墜つ!」が正しいんだろうけど、断固として今は「巨匠墜つ!」。

長年にわたりお世話になった巨匠が、お隠れになってしまいました。

末期の糖尿病が引き金となって、虚血性心不全を引き起こしたようです。
逝去されたのは2月3日、一人暮らしのアパートで知人に発見されたのは9日になってからのことでした。

偉大な恩人のご冥福を、心からお祈りいたします。

小生が巨匠と初めてお会いしたのは、30年以上前の学生時代のことになります。

当時小生はある学生新聞の編集をしていて、夏になると東京にノコノコ出かけてきて、大企業や受験予備校の広告集めにいそしんでいました。
普段編集している新聞が「プロレタリア××」とか「自民党○○政府××」とか、「△△空港粉砕」などというものであっても、学生が「広告ください」と訪ねて行けば、企業も予備校も二つ返事で出稿してくれたのどかな時代でした。
そんなわけで、年に数回上京し、新聞発行のための資金集めに都内を徘徊していたのです。

巨匠は、全国の学生新聞に企業広告を仲介する代理店のような会社に在籍し、面倒見よく優しい先輩として学生たちの活動を支援してくれました。
もともと、この会社自体、学生新聞編集部の出身者が作った会社で、いわゆる雄弁で理知的な人が集まっていました。
これが「ビジネス競争力」と微妙にずれているところに、この会社の持ち味はありました。

卒業後小生は、別の会社での数年間を経て、この会社に入り巨匠と一緒に働くことになりました。

そして、バブルが崩壊するころまでこの会社にいることになりました。

その間、一緒に麻雀をしたり、競馬を教えてもらったり、秋葉原でご推薦のオーディオセットを見繕ってもらったり、面倒見のいい巨匠には実にたくさんのことを教えてもらったものです。

巨匠と話をしていると、自分がいかに「浅学」であるかを痛感することが多かった。
巨匠の知識は、競馬から文学、音楽、絵画、コンピュータに至るまで、多方面の領域をカバーしてました。
たとえば、馬の血統についての理屈は大したものでした。しかし、巨匠が競馬で儲けたという話は聞いたことがない。
知識はそれ自体に価値があり、いかに現実の中で活かされるのかということにはほとんど関心がないような、どこかで達観したところのある愛すべき存在でした。

時には、会社の同僚として、その有り余る才能をなぜ仕事や会社のために活かそうとしないのか、などと腹立たしく思ったりしたこともあります。
しかし、「仕事や会社のため」という発想は、もとより全くないところが、巨匠の巨匠たるゆえんでもありました。
いわゆる、上からのしかかってくる「権威」のようなものが大嫌いな人でした。

巨匠のことを、「賢いトラ」とたとえた人がいます。

「賢い」は文字通りそのままの意味です。
「トラ」とはフーテンの寅さんのことです。

「男はつらいよ」シリーズで渥美清演じる寅さんは、日本全国を自由奔放に放浪し、たまに気が向くと浅草に帰ってくる。
そして帰ってくるたびに、様々なトラブルを起こし妹のサクラや親代わりのおじちゃん、おばちゃん、さらには印刷屋のたこ坊主にまで、たくさんの迷惑をかける。
一方、綺麗で優しい女性にめっぽう弱く、惚れっぽいうえに純粋で傷つきやすい。
だから、失恋するとまたどこかへふらりと行ってしまう。

いろいろ心配させてくれるけど、決して憎めない愛すべき存在なのです。

フーテンの寅さんには巨匠のような該博でハイブローな多方面の知識があるわけではないので、巨匠は「賢いトラ」というわけなのですね。

 

お通夜のあと有志が10人ほど飲み屋で思い出を語り、懐かしいひと時を過ごしました。

20年以上ご無沙汰していたのですが、この間にも巨匠の武勇伝はいろいろあるようで、しんみりしながらも懐かしい思いで話に花が咲きました。

「語録」でもまとめてみたら、面白いかもしれませんね。

中勘助を知らずに来たのは、生涯の不覚だったかもしれない!

無垢な子供ごごろ。それはかつて誰にでもあったものなのだろう。
かくいう小生にも、そんな時代があった(ような覚えがある)。

家族や友達、学校の先生との何気ないふれあいや故郷の自然。
その中で時に傷つき、嫉妬を感じ、意気消沈し、感激してきた。
嬉しいにしろ悲しいにしろ、大きな感情の起伏のただなかで、毎日毎日を送っていたような、そんな時代は確かにあった。

(閑話休題)

IMG_0747子供の作文を読んでいると、素直でみずみずしい感情表現に感心することがある。
絵や習字の類でも、この子がこの感性のまま大きくなったら、とてつもない芸術をモノにするのでは?、などと大げさに思うことも少なくない。

しかし、ほとんどの大人にはそういう「才能」が花開くことは無い。

中勘助の「銀の匙」を読んで、みずみずしい子供ごころと大人の豊かな感情表現力が、凡人にはとてもまねできないような高いレベルで見事に調和していることに、素直に驚いてしまった。

こんな世界があったのか!こんな小説があったのか!
大げさに言うと、いろんな本を読んできていても中勘助を手に取ることがなかったことは生涯の不覚であった、かもしれない!

「銀の匙」のほか、岩波文庫にあと2冊あるようなので、しばらく嵌ってみたいと思う。

NHK大河「花燃ゆ」についての、どうでもいい感想。

nhk「花燃ゆ」…初代の群馬県令・楫取素彦のお話なのだから、県民としては見ない理由はない。日曜夜に見られないときは、土曜の再放送を見る。

「新撰組」とか「竜馬」とか、維新のメインストリームではなく、やや地味な存在が主人公であるからか、立ち上がりの視聴率はいまいちのようだ。

それでも、第5回あたりから少しづつ面白く感じられるようになってきた。

NHKの大河ドラマは結構好きだが、これまでのシリーズ以上に今回の「花燃ゆ」で気になることは、ほとんどの登場人物が美男美女ぞろいであること。

たとえば、松陰の妹・文。
何かで読んだ話では、文がいわゆる醜女(シコメ)なので松陰は弟子のだれかを何とか結び付けようとして画策したが、久坂玄瑞あたりには「先生、それだけはお許しください!」と断られていたというようなエピソードもあるようだ。

妹が井上真央と優香、松陰自身は伊勢谷夕介、桂小五郎が東とか、配役をイケメンと美女で固めすぎ!、と感じるのは小生だけだろうか?

挙句の果てに、第6回に登場する謎の女囚はなんと井川遥!…「こんなのありえないよね!」というのが正直な雑感。

この調子では、これから出てくる竜馬や高杉晋作なども、いわゆるイケメン殿がやるんだろう。
まさか、西郷隆盛まで!?まさかまさか、それはないだろうが。

そんな美男美女オンパレードの中で、文の母親をやっている壇ふみや野山獄の門番などの脇役が、けっこういい味を出しているのが印象的。

彼らが出てくると、なんだかホッとするという、どこにでもいるブ男の雑感でした。

かなり遅れて初詣&お久のブック汚腐。

今年の1月はとても忙しくて、初詣にも行けませんでした。

月が替わって2月になってしまったら「初詣」でもないだろう!と思い、1月最終日の31日に遅ればせながら初詣へ。
安中市内に「羊神社」なるものがあると聞いていたので探してみようかと思いましたが、無難なところで貫先神社へ。さすが上州の一宮で、この時期にも結構お客さんが来ていました。
宝くじがよく当たるといわれる近くの酒屋さんはなぜかお休みでした。
石段では地元の中学陸上部がダッシュの訓練をしていて、「放課後の校庭を走る君がいた、遠くで僕は…」などという懐かしいフォークの一節が思い出されたりして。

帰りに、普段は行かない遠くのブック汚腐に寄ってみました。

書籍としての価値判断なしに二束三文で買いたたき、ひとまず半額で並べてみて数か月動かなければ「腐ったリンゴ」と称して100円コーナーに移動する。誰でもできるこの運営方法がブック汚腐の流儀なので、100円以外の古本を買うとまんまと店の戦術にはまる、こう固く信じている小生は、ブック汚腐ではよほど欲しいものがない限り100円コーナー以外にはいきません。

この日も100円コーナー主体にかなり時間をかけて掘り出し物を物色し、結局以下5点を買い込んできました(これ以上の冊数を買い物籠に入れて長時間ウロウロしていると、いわゆる「セドリ氏」と思われそうです)。

  1. IMG_0738まんがで読破 カラマーゾフの兄弟
  2. まんがで読破 神曲
  3. 河合隼雄×中沢新一 仏教が好き!
  4. 西部邁 知識人の生態
  5. 中勘助 銀の匙

IMG_0739「1」「2」は、原作に何回もチャレンジして、中途半端に終わっている古典。
さっそく「1」を読んでみましたが、けっこうおもしろく読めました。これならまんがで十分、などと思いました。

「3」は、対談なら平易に両氏の言説のアウトラインをつかめると思い、とりあえずこれをきっかけにもう一度「チベットのモーツアルト」あたりに取り組んでみようと思い…。

「4」は最近「朝まで生TV」などでシニカルな意地悪ウサギぶりを披露してくれないあの西部さんの本。まだご存命なの?など不謹慎なことを思いながら。

「5」は前から読みたかった本で、有名進学高校の先生が現国の教科書として使っているという日本語文体の模範的な作品とのこと。

どの本も、しばらく睡眠薬代わりなりそうです。