ワークスタイル考


私たちは、毎日疑いもなくせっせとオフィスに通勤しています。少なくとも高崎や群馬で働いている人の多くは、そうしています。

人により通勤時間やルートは様々ですが、付加価値を生まない通勤という行為に毎日何時間かを費やしています。

経営者の立場から見ると、社員が出社すれば机やスペースが必要になり、零細といっても福利厚生の類いが必要になり、電気代もただじゃない。
また、人が集まる以上、いくつか最低限のルールが必要になります。
やれ、集まる時間は何時が基準、退社は何時以降が基準、服装は最低限このレベルが標準です…等々。

ルールというほどでもないが、働く側から見れば最低限の標準的な振る舞いが求められているわけです。

一度そんなものを全部取っ払ってみたらどうだろうか?

必要ないなら出社に及ばず。基準勤務もなく振る舞い方の規範もない。

もちろん、何らかの付加価値を産み出さないと企業は持続できないから、出社に及ばずは「仕事に及ばず」ではありません。
また、社会の一員である以上、顧客や同僚に対する最低限のマナーは欠かせません(時間や約束を守るとか人としての基本的なマナー)。

しばらく前のSOHOブーム、数年前からのコワーキングスペースでのノマドワーク、そして今、官民挙げて盛り上げようとしている在宅テレワーク。

紆余曲折を経て、働く場所やスタイルだけで評価されるのではなく、仕事の付加価値で評価される時代がようやく本格的に間近に来ている、その現代的な風潮がテレワークという言葉の背景にはありそうです。
と同時に、これまで精勤や永年勤続という価値に慣れ親しんできた日本人に、根本的な仕事観の変更を迫る動きともなるのかもしれません。

というわけで、田舎IT企業の弊社でもテレワークなるものに本格的に取り組んでみたいと思っているこの頃。

重要なことは働くスタイルではなく、各職能が役割として何を期待されていて、それを担う人に期待に応える力があるのかどうか、というシンプルな生産性の問題なのだろうと思います(アウトプット/インプット)。

ワークスタイルの変革、ワークライフバランスの再考などというと少しかっこいいですが、因習的な田舎町で何ができるのか、今後試行錯誤していきたいと思っています。
在宅テレワークやワークライフバランスが、企業の持続可能性とどこまで両立するのか否か?を。

その際に参考になるのが、主に首都圏で展開されているいくつかのパイロット的な試みです。

ダンクソフト社のサテライト http://www.dunksoft.com/work/satelliteoffice
ソニックガーデン社のマネジメント http://www.sonicgarden.jp/

ソニックガーデン社の言う「納品のない受託開発」。う~ん、このハイブローなコンセプトは、とても田舎で理解されそうにないですが、サテライト勤務、在宅テレワーク程度のことならそれほどハードルは高くなさそうです。

そこで、改めてシステム企業の職能を分解してみると…

仕事を外から獲得してくる営業、受注したテーマに応じて納品まで付加価値を加えるシステムエンジニアとプログラマ、全体をコントロールするマネジャーと管理スタッフ、それから外部の協力者等…。
中小のIT企業にも、実にさまざまな役割の人が関わっています。

システム開発業において、それぞれの職能と期待される役割をまとめると一般的に下表のようになります。

どのような仕事 一般的な職能名 期待される能力
外部に働きかけ、仕事を獲得してくる職能 セールス ・予算達成力 ・顧客開拓力
未定型な仕事をブレークダウンし道筋を作る職能 システムエンジニア(SE) ・ブレークダウンスキル
・プライオリティ管理力
・パラレル志向性
・リソース管理能力
SEがブレークダウンした道筋に付加価値を加える職能 プログラマ(PG) ・システム開発スキル
・開発言語に関する知識
企業を代表する職能と管理のための職能 CEO 管理スタッフ ・危機管理能力
・経理、総務等の事務管理能力

しかし、多くの中小企業においては、営業~SE~代表業務などは、人格的に分けて考えることは現実的に難しいものがあります。
したがって、中小のシステム開発企業において、仕事の流れと各職能の関係を図示すると、下記のようなことになるのではないでしょうか。

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成熟社会とはいえ、マーケットにはまだたくさんのニーズが残されています。また、顧客のシステム開発要望も漠然とした未定型な形のままであることが多い。

営業やシステムエンジニアは、そうした未定型なニーズや市場の気配を注視し、仮説を立てながら整理された課題の束に切り分け、その解決方法を提案していきます。
したがって、仮説を立案する力、課題をブレークダウンする能力、プライオリティ感覚によって未定型な課題を整然と整理していく能力がまず必要になります。
しかし課題を整理しただけでは会社の売り上げにはつながらないので、顧客に解決策を提案し仕事を確保した後、プログラマやデザイナーに依頼して具体的な解決策を実行していかなくてはなりません。
そこでは、業務の意味や求められる品質基準等を理路整然と顧客や他の職能に説明(プレゼン)する能力も必要になります。
またたいていの仕事は、これが終わったら次はこれという形でシーケンシャルにやってくるわけではないので、多くの仕事をパラレルにこなす能力も問われてきます。
予算管理も営業やSEの仕事の一つなので、プロデューサー的な感覚が必要とされる仕事でもあります。

営業やシステムエンジニアがブレークダウンした課題の束の中から、いくつかのテーマを担当し、品質と納期をにらみながらシステム価値を加えていくのがプログラマの仕事となります。とうぜん、幅広い言語対応力があるプログラマほど、担当できる仕事の幅も広くなります。
よく「SEはパラレルに業務を行い、PGはシーケンシャルに業務する」と言わますが、これは一昔前のウォーターフォール型開発時代の神話ではないかと思っています。
早期にプロトタイプを作りイメージを顧客と共有しながら試行錯誤を繰り返す現代のアジャイル開発の現場では、SEもPGもパラレルに物事を進めていく習慣とマルチな能力を身につけるべきだと痛感しています。
一昔前、「T字型人材」ということがよく言われました。エンジニアリング業界のプロジェクトマネジャーの世界では、幅広い知識と特定分野の深い知識を併せ持った人材が競争力が高いという理想像のことです。
この「T字型」という人材像は、プログラマについても同じことが言えるのではないかと常々思っています。
つまり、何か一つの言語をしっかり身に付けているPGは、その言語との関係で他の言語にも幅広く容易に対応できるというのは事実です。
深堀ができているPGは、幅の広さにも柔軟に対応できるということなのだろうと思います。

中小企業にとってCIOとか管理者、管理スタッフなどの職能は、極めてあいまいな範囲を幅広くカバーしなくてはならない宿命にあります。
顧客や外部との接点は、代表の人格と経験に依存する部分が極めて大きいのが現実で、これは一朝一夕に変えることはできません。
それが嫌なら企業として何とか発展を遂げ、マイカンパニーをアワカンパニー、ソーシャルカンパニーに成長させていくしかないですね。

さて、どこから始めるか? テレワーク!

弊社のようなシステム開発業にとって、テレワークは、まず短期的にプログラマにおいてすぐ導入が可能だと考えています。
PGでうまくいけば、営業、SEなどの顧客やマーケットとの接点がより大きい職能でも、次の段階で可能になって来るはずです。

しかし、成功のためにはテレワークを担う人材が期待された役割をきちんとこなせるスキルを有していることが前提です。

テレワーク推進のファーストステップとしては、下記のような職能連携イメージを抱いています。

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もちろん、これを実践するためにはVPNなどのネットワーク環境、社内システムへのセキュアなログインと活用の仕組み、コミュニケーションの取り方、法連相のルールなど、多くの解決しなくてはならない課題があります。

また、創発のためには「法連相」ではなく「雑相」(雑談と相談)が大切とも言われていますので、そうした環境整備(運営ノウハウ)も重要な要素になることは言うまでもありません。

しかしながら、1か所に集まって同じ時間作業するワークスタイルや、客先常駐で社員の時間とスキルを切り売りする経営形態から一刻も早く脱出しないと、IT企業としての未来もたかが知れているという問題意識は強く抱いております。

そんな意味で、テレワーク、ワークライフバランスに関心を持っているわけです。